朝がきて、看護師さんたちが様子を見に来る。手術箇所がどうなってるかわからないが傷口からチューブがぶっ刺さってるのはちょっと引いた。説明によると傷口からしみしみ液(通称しみしみ)が出るため点滴の袋みたいなものに血も混ざった液が、たまってる。
あんまりみないようにした。あとは発泡スチロールの塊みたいなものを胸と背中にあてられてた。
看護師さんはそれらのチェックにきてくれたのだ。朝はもう、お水飲んでよかったので飲んでいたがご飯は昼からだった。待ち遠しい…。
夜はよく眠れなかったので昼ご飯までうとうとしていた。母が昼から来てくれるとのことで待っているとすぐお昼になった。麻酔のせいもあるのか時間感覚が全然ないのだ。
昼は温かいうどんだった気がする。そんなことがいちいち嬉しかった。なんせ、昨日からなにも食べてないのだから。こんなに食べなかったのは人生初。
いざさっそく食べて、その時のおいしさときたら………単純だけど身体が欲しがっていたのだ。全部は食べられなかったけれどおいしくいただいた。
が、あまかった。
おいしさが、わかるのに身体が受けつけない。つまりもどしました。全部。すっきり。看護師さんにナースコールで呼び出して急いで桶を用意してくれたので大惨事にはならなかった。看護師も、手馴れたもので「よくあるんですよー」だって。
あ、そうなんですね。
母が到着。ケーキをもおみやげに。素晴らしきかなまっ赤なイチゴのケーキ。もちろん食べました。そしたらすんなり戻さず食べれました。昼ごはんはもどしてしまったがケーキはおいしくいただいたことをいうと「やっぱ術後の最初の食事はケーキだね」。…はい、おいしかったです。
その日のうちに身体がどうなっているが把握できるぐらいまで回復していた。今使用している糸は傷口がなくなるのと同じようになくなってしまうとか。医療の進歩だ、と感銘。あと、先生が術前に話してくれたけれど、筋肉の一部を切除したため身体が左右対称じゃなくなったとか。
そして、母から聞いた一番驚いた話。
まさかの昨日の手術中に、大規模な停電になっていたらしい。東京電力の火災?とかなんとか。
まさに、胸がひらかれているその時停電にあい、たまたま一階にいた母はエレベーターが使えなくなった現場を目撃したとか。
術後、待合室に来た先生はヘロヘロで、なんと懐中電灯をあてながら手術してくれたらしい。他の術中の患者さんのご家族も待合室にいたが、自分よりも難しい手術をしている患者さんは切ったがなにもせず、身体を縫い合わせたらしい。
なんか、あのブラックアウトしてる間に世界は激変していた。
そんな中の手術、先生、ホントにありがとうございます。
手術後は糸でひっぱられ動かない身体を動かしもとの柔らかさまで戻す。最近の治療そうらしい、入院日数も少なくし、身体がいたいからと言って術前より身体が硬くなるのはあり得ないと看護師さんに念押しされた。はやく日常生活になれさせるらしい。
しかも、この後、控えている放射線治療は両手万歳のポーズさせられるのだそうで身体をもとの状態にしてと強くいわれました。
こっちとしても絵がはやく描きたいので一生懸命もとに戻しました。
そしてその一貫で術後はリンパマッサージをするようにとのすすめでレクチャーを受けることになる。
術後、リンパ節を切除した人はとくにリンパ浮腫になりやすいとか。傷をおったほうとは逆のほうがそれを補うため、負担がかかりリンパが、流れにくくなると看護師さんがいっていた。
やさーしく三本の指で…ゆーっくりながしていく。たしかにずっと同じ体勢や絵を描き続けていると身体が痺れたように痛いのだ。身体の一部がないということは、そこを補い負担が他のところにかかる。こういうことかと納得。
入院していて3日ぐらいたつ。これは診察している時からだが、まっ赤な格好しているのでいろんな人に話しかけられる。
回診が早朝行われるのだが多勢のお医者さんが狭い病室にくるのはこわい。そこでもとにかく病気とは関係ないことを話される。
チャキチャキの手術してくれた女医さんは「笑顔がいい」っていってくれるし、外科の先生はちょくちょく顔をみせてくれてお話しした。赤い絵をとても気にいってくれた。
お見舞いにきた同居人のおもちさんをお兄ちゃんと勘違いしていたのは面白かった。
看護師さんはもちろん、患者さんにめちゃくちゃ話しかけられる。着ている服のことはもちろん、術後にはイヤリングとかつけてキャップは自前だったので異質だったのだろう。あとはなんの仕事しているか、病室で描いている絵とかを見て話すことがかなりあった。
歩くハッピー野郎である。
血液の癌で、ものすごく辛そうなおばあちゃんに話しかけられた時は、ちょっとおどろいた。
ほとんどベッドで絵を描いているだけだがたまにアイスを買いに散歩したりする。診察終了の時刻にアイスを食べるのは最高だ。
夜中眠れない時は前回肺炎同様、やはり夜景を見に散歩する。18Fのラウンジで見る夜景はすばらしい。ただ、隠れてラウンジにいたため警備員の人にかちあい互いに驚いてしまった。
驚いただけでほっといてくれるのは優しい。
病院内は異質な空間でとても面白いのだ。
おもちさんは仕事の帰り、母は毎日きてくれた。おもちさんは成城石井で、もーもーちゃーちゃーとフルーツをいつも買ってきてくれるし、母は一緒に夕食を食べたりした。仕事終わりだから短い時間しかいられないが、とても嬉しかった。
病気を楽しみたかったし、非日常はとても有意義だった。
入院最後の日には美しい日の出を18Fラウンジでみた。
こうして長くて短い入院生活が終わりを告げた。
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